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- 京都をつくる、京都の土産 Vol.9
日本人の原点を感じる品々
撮影で宇治神社を訪れたとき、神社の後ろに控える山肌を見て神の国・日本の伝統を感じ、心が落ち着きました。今回紹介した土産物は食べ物が中心でしたが、宇治の食文化もどこかほっとする中に、日本人の原点や品格のようなものを感じさせてくれるものが多かったと思います。
中でも大きな存在はやはり抹茶ですね。宇治の抹茶は「独特のコク」としか表現しようがない深い味わいがあります。日本人の持つ侘(わ)び・寂(さび)をこれだけ微妙な品格の差で表現している食材はお茶のほかにないでしょう。食の創意工夫はしっかりとした基本の上に成り立つものです。宇治ではこの抹茶の味わいが基本となり、素材本来の姿を連想させることが作り手の営みとなっている。だからこそ、コロッケや卵焼きといった日常の食にも豊かさがもたらされるのでしょう。
牛スジのトロトロしたコクはしっかり出ているのに、食後感はすっきり。上質の昆布と削り節の和風だしがしっかりとしたベースになっており、カレーの香りに負けていない。底冷えする京都の冬の夜食にこのうどんがあれば、風邪知らずで過ごせそうだ。
それぞれの素材の持ち味がわかってどれも楽しい。小瓶なので、少人数の家庭でも飽きないうちに食べ切れる。
カボチャ、栗、枝豆などのまったりした食感はもともとジャムに合うし、青梅や唐辛子もすっきりして意外な美味しさ。外箱と、箱にかけられた店名入りの熨斗も京都らしい。
ひと口食べた瞬間に幸福を感じられるものを選びました。抹茶を使った品は数多くありましたが、中でも「濃茶ロールケーキ」は抹茶本来の味が濃く、風味も生きていましたね。和菓子やスイーツ類だけでなくおかず系も健闘しています。「京育ちのビーフコロッケ」はしっかりと牛すじ肉が入り、ジャガイモの素材感もあってそのへんのコロッケとまったく違いました。また、革新的な商品もあって面白かったです。「京の野菜ジャム竹籠入」は、玉ねぎなど「ジャムにするの?」と思う野菜も使っていますが、口に入れるとなるほど納得のお味でした。そのほか、宇治をあちこち歩いた記憶を思い出しながら、幸福感と一緒にいただいたものばかりです。
- Vol.0 奥山和由氏 インタビュー
- Vol.1 「京都文化をつくる伝統の京土産」
- Vol.2 「祝いの心の表現に選ぶ京土産」
- Vol.3 「新しい京都を創る革新の京土産」
- Vol.4 「作り手に共感する愛用の京土産」
- Vol.5 「もらうと思わず笑みが出る京土産」
- Vol.6 「四季の京都を愛でる旬の京土産」
- Vol.7 「一年の感謝の心に選ぶ京土産」
- Vol.8 「人に教えたくない隠れた京土産」
- Vol.9 「奥山和由氏が選ぶ京都土産ランキング」
撮影協力:茶室 対鳳庵、お茶の通圓