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- 京都をつくる、京都の土産 Vol.2
【源氏物語ミュージアム】 源氏物語に関する国内唯一の博物館「源氏物語ミュージアム」(宇治市宇治東内)を訪ねて。「大きな模型などの展示物や解説で源氏物語の世界にいざなってくれる。男女の恋愛が永遠のテーマであることに浸り、ずっとここにいてもいいと思える柔らかな空間だ」
喜びの気持ちを伝える難しさ
祝いの心を表現することとは、華やかな気持ち、喜ばしい気持ちを相手と共有している、と伝えることだと思います。喜怒哀楽の4つの感情のうち、喜びは品物を通じて表現できる唯一の感情です。それだけに、伝えるのが難しい。たとえば、定番の贈り物の一つとして、花が挙げられます。美しいけれど、贈る側に個性は要求されません。贈られた側も、その瞬間は嬉しいでしょう。ただ、きれいだという印象で終わってしまうと思います。
タイミングにも2種類あります。仕事や人間関係のお付き合いの上で「祝わなければならない」ときと、心から「祝いたい」とき。祝わなければならないと思いながら選んだ贈り物というのは、相手にも伝わります。ありがたい半面、贈られた側からすると「お返しをしなければ」という義務感も沸いてくる。その段階で、祝っていただいたという感謝の気持ちは薄れてしまいますよね。
自分が心踊る、と思う品を
僕が祝いの品としていただいて嬉しかったのは、美術監督だった西岡善信さんからの贈り物でした。小さな漆塗りのお盆でね。別にお盆が欲しかった訳じゃないんだけど(笑)。西岡さん自身が素晴らしいと思って選んでくれたということが伝わる品だった。その盆を見るたびに、当時の喜びや「良かったね」と祝ってくださった西岡さんの笑顔を思い起こします。
贈る人自身が、一番素晴らしいと思うもの、心躍ると思うものを贈ることが、贈られた側の喜びにつながるんだと思うんです。食べ物は良いと思ったものを選んで贈ることができるものの一つ。そこには「自分」がある。たとえば花を贈るよりも、ずっと喜びの気持ちを伝えられるんじゃないかな。
煎餅というより薄いどら焼きの皮のような桜葉を練り込んだ生地に、小倉粒餡、求肥の甘み。桜葉の塩味とのコントラストが面白い。包装紙も箱も華やかな桜色、桜柄と凝っている。
ネーミングの由来が書かれた栞からも、贈り手の気持ちが伝わるだろう。全体が華やかでお祝いごとにぴったり。「よく見つけてきた」と贈った相手に感心されるはずだ。
パリパリと口に入れる度に、ゴマの味と香りが広がる。一枚食べると「何だかきょうは元気になった」と思えるせんべいだ。黒い箱といい、「護摩来福」と書かれた白地にエンジの縁取りの掛け紙といい、何だかご利益がありそう。
ネーミングからしても快気祝い、内祝いなどに喜ばれるのでは。
- Vol.0 奥山和由氏 インタビュー
- Vol.1 「京都文化をつくる伝統の京土産」
- Vol.2 「祝いの心の表現に選ぶ京土産」
- Vol.3 「新しい京都を創る革新の京土産」
- Vol.4 「作り手に共感する愛用の京土産」
- Vol.5 「もらうと思わず笑みが出る京土産」
- Vol.6 「四季の京都を愛でる旬の京土産」
- Vol.7 「一年の感謝の心に選ぶ京土産」
- Vol.8 「人に教えたくない隠れた京土産」
- Vol.9 「奥山和由氏が選ぶ京都土産ランキング」
撮影協力:平等院、源氏物語ミュージアム、宇治神社