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- 京都をつくる、京都の土産 Vol.1
【平等院】 世界遺産にも登録されている平等院(宇治市宇治蓮華)前で。「ここに来ると、ある種の穏やかさと清清しさを感じる。すべての人間は死に向かう。それが唯一最大の平等であるという死生観を、あらためて認識させてくれるからでしょうか」
悠久の時間に積み上げられ、淘汰されてきた文化
京都は街そのものが一つの伝統であり、文化の結晶です。1000年以上守られ、受け継いだ人が伝統に磨きをかけていく。悠久の時間を大事にして、良いものを細やかに積み上げる。しっかりとした基礎の上に、時代に即応した変化を重ねて自然淘汰されてきたのが京都の文化です。
それを揺るがぬ価値観として抱く人と人、店と店が集まっている。角度を変えて言えば、積み上げていくという行為と価値観を10年、20年の単位で見守っていこうとする懐がある街ですよね。東京のように1分1秒を争い、表層を追いかけて息を切らす街ではなく、ね。
新参者には入りにくいかもしれないが、排他性を乗り越えて基盤を築くことができれば、割と気長に温かく迎えてくれる。人の一生という単位でみて、大きなことができる街だと思います。それが伝統を培う土壌になっているのではないでしょうか。
『伝統の空気』を伝える品
以前、京都のある旅館の化粧石鹸の詰め合わせをいただいたことがありました。こぢんまりとした箱に6個ほど石鹸の入った、品のいいものでした。それほど値段が張るものではないのでしょうが、手にしたときに「ああ、あの旅館の石鹸か」と思う。細やかで神経の行き届いたその旅館の空気を思い起こさせるのです。伝統を商品に生かす知恵として、非常に感心した覚えがあります。
贈り物は、年齢や性別、地位などすべて含めて、贈る相手を自分がどう評価し、受け止めているか表してしまう。相手の方に相応しい伝統的な品を選ぼうとすれば、それなりの値が張ります。ある程度の価格を覚悟して選んだものでなければ失礼に当たる。ただ、価格を上回る知恵で「伝統の空気感」を伝えられる品物もあります。いずれにせよ、京都が誇る伝統文化を理解し、土台に基づいて発展させた品物でなければ、その本質は伝わりません。
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精進料理の老舗が最高級の素材と吉野葛を使い、昔ながらの製法で作る変わり豆腐のセット。
胡麻豆腐は胡麻の皮すら残さず、なめらかな舌触りに仕上げられている。胡麻特有の押し付けがましさもなく、体に染み渡る味わいだ。
抹茶はお茶の味が濃く、品の良い甘み。豆腐であることを忘れさせる、スイーツのような一品になっている。
山椒の香りとピリピリ感、パンチの効いた味わい。山椒の効いたお菓子は珍しく、香りも良い。とてもおいしくいただいた。
お茶はもちろん、ビールのお供にもぴったりだ。この味を覚えたら病みつきになってリピーターとなる人が続出するだろう。七味タイプも美味しいのだろうと想像を巡らしている。
ちりめん山椒好きを自負するわたしだが、これは初めての感覚。
香ばしさ、しっとり感、ピリリとした山椒の風味。どこをとっても美味しい。
ラベルも女性職人らしいセンスが味わい深く、いかにもホームメイドといった風情を醸し出している。
- Vol.0 奥山和由氏 インタビュー
- Vol.1 「京都文化をつくる伝統の京土産」
- Vol.2 「祝いの心の表現に選ぶ京土産」
- Vol.3 「新しい京都を創る革新の京土産」
- Vol.4 「作り手に共感する愛用の京土産」
- Vol.5 「もらうと思わず笑みが出る京土産」
- Vol.6 「四季の京都を愛でる旬の京土産」
- Vol.7 「一年の感謝の心に選ぶ京土産」
- Vol.8 「人に教えたくない隠れた京土産」
- Vol.9 「奥山和由氏が選ぶ京都土産ランキング」
撮影協力:平等院